ファンタジーと料理漫画を合体させるという、誰でも思いつきそうなアイデアを高いレベルで実現したすごい作品。
世界設定はWizardry を彷彿とさせる。
ドラゴンに挑んで全滅したパーティのリーダー、ライオスが、ドラゴンに喰われた妹ファリンを復活させるために再度ダンジョンへ挑む。金を節約し、一刻も早くドラゴンを倒すために、「魔物を調理する」魔物食に手を出す。
魔物の知識が豊富で魔物食に興味津々のライオスに、魔物食のエキスパート、ドワーフのセンシが加わって、魔物食を極めていく展開。
「魔物食」というコミカルなテーマでありながらギャグに偏らず、ダンジョンにまつわる設定もかなりしっかりしており、ダンジョン漫画としてのレベルも高い。続刊が楽しみ。九井諒子氏の他の作品も気になる。
別のブログでシェイプシフターの回についての考察を書いた。
『ダンジョン飯』6巻シェイプシフターの考察と回答例(ネタバレ)
7巻
2019-04-12 発売
新メンバー、半獣人のイヅツミを加えてのダンジョン探索。
急転直下、城の住人との遭遇や、明かされるセンシの過去にまつわる逸話など、読者を飽きさせない展開は見事。
ファンタジー世界に遊ぶ冒険者の間ではしばしばファンタジー世界の生態系はリアリティの一環として話題になる。
初期のTRPGではしばしば地下迷宮に野生動物が登場し、「こいつらここでどういう生活してんだ?」というような疑念が生じることあった。そういう違和感は次第に淘汰され、違和感のない世界設定を持つファンタジーが普通になってきている。イマジネーションがリアリティに近づいている。
『ダンジョン飯』がイロモノで終わらない理由は、まさにこの「イマジネーション」の秀逸さにある。魔物はどのようにして動き、冒険者を襲うのか。どのようなライフサイクルを送っているのか。ダンジョンはどのようにして整備されているのか。
そのイマジネーションは魔物だけではなく、「なぜ主人公たちは魔物を食べることになるか」「なぜ主人公たちはダンジョン深部に近づくことに成功するか」「そもそもダンジョンが成立したのはなぜか」といった物語の骨格にまでおよぶ。
作者のイマジネーションが、読者をワクワクさせる原動力になっている。思えばこれは正統的なファンタジー作品のありようではないか。
8巻
チェンジリングの回。トールマンになったチルチャックが「地面が遠くて怖い」と言っているシーン。これもすごい想像力。