紹介文
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に大切な発明までだましとられたぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ。そんな時、「冷凍睡眠保険」のネオンサインにひきよせられて…永遠の名作。
中学生の心をわしづかみにする名作SF
小学校6年生の時に読んだジュブナイル版『鋼鉄都市』を押しのけて、一躍私の中のベストSFになった作品。おかげでこの後、私のSFはハインラインばかりになってしまった。
猫好きに献辞が捧げられており、私の中での猫評価を大きく押し上げた。
新訳が出たはずで、読まなくちゃと思っていたけれど、あまり見かけない。それを言うなら原書も読まなくちゃと思っていて、こちらは手元にあるのに一向に読み進めていない。
学生時代、知人に好きなSFを尋ねられて『夏への扉』と答えたら「あれを読んでSFを見直した」と言っていた。
あらためて今読み返すと感動が薄れていたりもする。大人になって読むなら、同じハインラインでも『悪徳なんか怖くない』や『月は無慈悲な夜の女王』『愛に時間を』などの方がいい。『夏への扉』は若者が胸をいっぱいに膨らませて読む物語なのだ。